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2003年 FIDICフランスパリ大会

Plenary Debate-2
Criteria for Project Acceptability

国際活動委員会副委員長 蔵重俊夫

大会初日の全体会議として行われたこのセッションは、ある意味、今大会を象徴する内容であった。これまでの大会の全体会議ではサステナビリティやインテグリティあるいはキャパシティ・ビルディングなど、FIDICのポリシーに密接に関連したセッションが企画されてきたのに対し、当セッションはプロジェクトの成立要件に関する議題が取り上げられ、明らかに、これまでの大会の流れと一線を画す内容であった。

最初の話題提供者はIT関連のサプライヤーであるSAGEM社会長のGregoire Oliver氏である。SAGEM社は近年、高速テレコミュニケーション網の整備事業や指紋検出システムなど、広範囲な事業を手がけている。そして、各種プロジェクトについては投資家を募り、彼らとの共同事業により事業拡大を図ってきたとのことであった。その結果、社株の45%を社員が保有している特殊な経営形態となっているとの説明がなされた。そして、現時点で、年間3億ユーロのプロジェクトが動いており、10Mbの高速テレコミュニケーション網の整備などが検討されている。CE企業についてもこのようなプロジェクトに対する参入を大いに歓迎したいとのことであった。また、長期的な観点からの投資計画も考えるのかといった質問がなされたが、事業はあくまで短期的な採算を考えることが必須であり商品を売るために作るのだという立場を鮮明にされた。しかしながら、維持管理・更新のサイクルに沿って事業を進めていく以上、長期的観点も重要との意見であった。

次の講演者はInternational Construction Workers Federationの会長を務めるAnita Normark女史である。同連盟は、元々、森林管理技術者のユニオンから発展したもので、その時代から継承されてきた連盟の基本的な方針は、持続的開発、組織責任の追求、品質確保である。持続的発展に関しては、森林を初めとする環境と労働者の両面から考えることが重要であり、長期的視点を持つ必要がある。組織責任に関しては、労働環境の維持、良好な評判の確保が重要で、前者はILOに準拠した運営が基本であり、後者に関しては一端評判を失うと入札に参加できないことになるとの説明がなされた。また、同組織は世界の色々なプロジェクトにおいてWBやWTOとも密接な連携を保っているとのことであった。品質確保に関しては、低価格入札により技術的・技工的に劣る労働力を採用し、品質確保が困難となり、産業そのものの活力も低下しつつあるとの懸念を表明され、例えば、立派な施設を建設したときの誇りを大事にしたいとの話であった。そして、フロアからのコメントに関連し、品質低下を防ぐ良い契約約款があれば、WB等に提案しても良いとの立場が示された。

最後の講演者は、Social Responsibility Observatory (ORSE)会長のFrederic Tiberghien氏であった。氏の講演は持続的責任を持つ投資についてである。投資の指標(criteria)そのものについてはWB、投資の基準(standard)についてはILOなど、数々の基準が設定されているが、とにかく重要なことは、社会の関心に留意することであるとの意見が提示された。そして、化石燃料の消費低減量など、成果主義の立場をとることが肝要との考えが示された。また、プロジェクトを評価する指標の選定においては、どの指標を除外するかの基準を明確にしておくことが重要であり、プロジェクトのモニタリングに際しては、あらゆるステイクホルダーが責任分担する立場の重要性を強調して発表を結ばれた。フロアから、指標も明確でないサステナビリティの教育訓練をどのように行うかという質問がなされたが、結局のところ各企業で開発するしかないというのが氏の見解であった。

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