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2003年 FIDICフランスパリ大会

Workshop-2
Monitoring the social and economic impact of regional development

教育推進分科会長 林幸伸

開発プロジェクト実施における、地域社会に対する社会的、経済的、ならびに環境面の影響マネジメントは、持続可能な開発を進める上でコンサルタントに求められる重要なタスクとなってきている。本ワークショップでは、主としてアフリカの6つのプロジェクトにおける取組み事例が紹介された。

(1)ギアナにおける道路プロジェクト

熱帯雨林を縦貫する延長60kmの道路建設事業であり、生態と植生に対する環境影響の回避、土壌浸食対策、地域住民への生活影響の最小化が課題となった。設計面における配慮、ローカルコミュニティとの密接な対話、GISデータベースを利用した環境モニタリングなどの対応策が紹介された。

(2)アフリカのプロジェクトにおける疫病の防止策

アフリカの道路プロジェクトにおける疫病の防止策に関する事例報告であった。基本的に人間と自然の新たな接触により発生する疫病の問題であるが、建設中においては熱帯雨林や水に起因する伝染病や風土病の感染対策が課題となった。さらに労働者の流入による地域住民の生活環境の変化にも気を配る必要がある。例としては、ドラッグなどの悪癖の伝播やSTDの流行などがあげられる。また、建設後においても人間の感染症の罹患機会は増大する。対策としては、安全な水を地域に確保するための給水施設の建設、医療品の供給、労働者や住民に対する教育・啓蒙活動を実施した。

(3)フランスの地方都市再生プロジェクト

フランスの地方都市(12000戸)の再開発プロジェクトにおいて、ゾーニングやレイアウトに環境整備と公共社会施設上の配慮をどの様に取り込んでいったかのプロセスが紹介された。

(4)南アのパルプ産業用の森林保全

南アでは林業による輸出収入が全体の7.4%に達するが、森林伐採による保水力の低下により土壌浸食が顕在化したり、地域社会の生活環境に負の影響を及ぼしたり、原生動植物に打撃を与えたりという問題を引き起こしている。コンサルティング業務では、これらの悪影響を最小化するための木材運搬道路ルートのレビューや、地域社会に対する新しい水源確保の計画を実施した。建設段階では、現地材料を最大限活用し維持管理は最小限の技術で可能となるように配慮した。

(5)南アの湿地帯保全

南ア高地における湿原破壊の現状と回復するための取組みが報告された。農民やコミュニティへの啓蒙を行い、無秩序な農地開発を喰い止め、上流域における適切な保水施設の建設を実施した。施設建設においてはローカルスタンダードを配慮した工法を選択した。

(6)アジアにおけるEU主導プロジェクトの外部モニタリング

中国をはじめとするアジア13カ国においてEUが資金関与したプロジェクトのモニタリング実施のプロセスが紹介された。EUでは初めての試みであったが、これはプロジェクトのSustainabilityに関わる早期警報を意図したもので、個々のプロジェクトの監査を目的としたものではない。現状におけるプロジェクトの品質、効果やインパクトを計り、財務面と環境面におけるSustainabilityを評価した。

(7)所感

1時間半の間に6本のプレゼンテーションが矢継ぎ早にフランス語にて披露され、大変忙しいワークショップであった。時間的な制約から各々のプレゼンテーションも概括的な説明に留まらざるを得なかったが、人為的開発に対して非常にナイーブな未開地域における自然環境とコミュニティを守ろうとする思いはプレゼンターから良く伝わってきた。開発と開発に伴う負の影響の折り合いを如何につけるかは永遠の課題であるが、可能な限り多くのステークホルダーが納得できるような開発プロジェクトと合意形成のプロセスを導き出すことがコンサルタントに強く求められていることを感じた。

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