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2003年 FIDICフランスパリ大会

Workshop-4
Integrating operation and maintenance costs at design stage

日本工営(株) 飯島元彦

持続的開発を念頭におくと、建設完成後の運営維持管理に要するコストを最適・最小にすることはエンジニアリング上の重要な課題の一つである。このWorkshopでは、設計時点において、Project Life Cycle Costの観点からO&Mの技術・コストを積極的に取り入れ、事業の継続性・新規分野に生かした例として、オーストラリアの高速道路、パリの地下鉄新線に対する調査、ITビルの設計の3件について報告があった。

(1)オーストラリアの高速道路建設

延長距離25kmの高速道路での、自動化された料金所の設計業務におけるO&Mコストの取り組みに関する説明であった。10,000人/日の通行量を有する料金所はETCシステムを採用しており、車両の登録ナンバーあるいは登録写真をもとに、通行違反した場合の罰金徴収までをシステムとして組み込んでいる。今回の設計業務においては、運営後従事するオペレータを設計段階からアサインすることでOverall Operating Systemの最適化を図った。

(2)パリ地下鉄新線への取り組み

実施予定の地下鉄新線計画に対し、民営化を年頭においたライフサイクルコストの最小化を図る調査業務の経過報告であった。ライフサイクルコストとしては、スペアパーツ・維持運転管理費はもとより、周辺施設である公園の管理費(?)、車内での監視巡回員(暴力行為の防止)までが算定対象になっていた。これらの検討項目はこれまでの40年に及ぶメトロ運営の経験からきているが、運賃決定にどう反映させるかが今後の課題である。

(3)建築構造物の維持管理費への新規アプローチ

フランスとドイツでのビル建設計画に関する報告であった。フランスにおける建築構造物のライフコストは、20〜30%の土地収用費と、70〜80%を占める建設・維持管理費に大別でき、後者には解体コストも含まれている。法律によって解体方法が規定されている建設資材もあり、解体コストは設計時のコスト算定における重要な要素となる。ITで代表される日進月歩の技術を取り込んだ関連施設の設計において、20〜30年間のビル耐用年数にわたるライフコストの算定は大変であるが、ビルの補修・改築分野は今後拡大する市場の一つである。同種の例として、ドイツにおけるO&Mコストの統合化への取り組みが紹介された。IT技術・ソーラー/コジェネ等の新領域技術の設計への考慮が今後のライフコスト算定に欠かせない。最後に、建築分野ではこれまでのClient/Architectという2者関係から、新領域技術の設計への取り込みによってEngineerを含めた3者関係に業務分担が拡がったこと、又、右図に示すように、統合的設計業務の取り組みによりライフサイクルコストが低減されるという点を強調していた。

(4)所感

3件とも民間案件に関する報告であったが(内2件は仏語でのプレゼンでかなり戸惑いました。)、共通している点は、施設建設後のO&M技術あるいは運転管理費までを設計時に取り入れる事により、トータルプロジェクトコストを評価していることである。日本においても、性能スペックの導入、運転維持管理業務の民間への委託等、O&Mに係わる市場に変化が起きている。設計時において、施設の運転・機能維持を技術・コスト両面から、これまで以上に十分調査・解析することが求められていると再認識させられた。又、IT技術、エネルギー支給形態の多様化によるマネジメント業務の分野の拡大は、ビル建設計画に限らず、広くインフラ施設全般に対しても適用できると思われる。

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