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FIDIC Forum:Economies of scale in a global organisation

OYOインターナショナル株式会社 代表取締役社長
技術研修委員会 教育推進分科会特任委員 田中達吉

私にとっては、初めてのヨーロッパ、初めてのFIDIC大会、初めての家内連れという初めてづくしの一週間でした。最初だから...ということで物見遊山の気分で参加申し込みをしたのが間違いのもと、出発を間近に控えた8月頃になると、FIDICの大会とは何を議論するところなのか、当地の気候がよくわからない、持参する衣服はフォーマル、カジュアルをまじえどのようなものを持っていけばよいのか、などなどわからないことばかりであることに気がつき、愕然とするとともに、「参加を取りやめにしようか」と気重になりました。迷っているところを元気付けて行く気にさせてくださったのは藤江事務局長の「まあ、みんな助け合いますから、気楽に行きましょう」という言葉でした。

AJCEではFIDIC大会の報告を参加した人で分担して実施することになっていたようで、井の中の蛙は何も知らずに出かけたということでした。私の分担はFIDIC FORUMです。ここでは3名のプレゼンターにより講演がなされ、最初の講演はフグロ社のCEOによるものでした。オランダで創立されて40年間のうちに急成長し、現在では職員8,000名、年間売り上げ1,000億ユーロという超大型な調査会社となっております。この講演が大変印象的でしたので、後の2つの講演は残念ながら記憶にありません。

フグロ社の戦略は、オフショアの地盤調査に対してコーン貫入試験をメインにすること、現場で解析し結果を迅速に提出すること、地盤情報に基づき適切なアドバイスをタイムリーに行うことという程度のもので、それほど複雑ではありません。シンプルイズザベストを文字通り実行したのではないかと思います。また、最初の成功のあと次々とローカルの調査会社を買収していき、規模を大きくしております。私は現職の前には日本で最大規模を誇る地質調査会社に所属しておりましたので、興味深くこの講演を聴きました。単純な比較はできませんが、英語の世界に問題なく入っていけるオランダの企業と日本国内のマーケットを主たる対象としてきた国内企業との差が如実に出ているように思います。企業戦略やCIはともかく、営業展開、顧客開拓について大いに聞きたいところでしたが、残念ながら肝心なところは紹介がありません。

大会の開催概要によると、FORUMでは、さまざまな企業構造、企業の所有形態、新業務領域における業務メリットに関する講演とされておりました。フグロ社の講演は基本的にはサクセスストーリーのみでとどまり、今後の展開、他分野コンサルタントとの関連などに関する話はありません。この講演を聞きながら、このような講演が来場者に対してどのようなメリットがあるのか疑問に感じました。残念ながら浅学のためFORUM企画者の意図を読みとることができませんでした。

初めてのヨーロッパということで観光には精力的に取り組み、街の美しさを十分に堪能しました。コペンハーゲンの街を歩いていて、まず気がついたことは乳母車を押している男性あるいは女性の姿が目立つことでした。その乳母車は昔ながらの4輪タイプで防風雨よけのついたもの、あるいはバギーと呼ばれるタイプのもの、自転車の前に取り付けられた乳母車などいろいろなの形のものがありました。日曜日にストロイエを散策していると、次々と乳母車が現れ、大変驚いたものです。また、街中を10名から20名程度の子供達の行列が通ることもしばしばでした。引率の先生と見られる人が先頭と後尾に必ずおります。クロンボー城を訪れたときもこのような子供達の行列があり、先生のレクチャーを熱心に聞いていたのが印象的でした。このように子供が多いのは、子育てが大変やりやすくなっている環境ができているためであろうと想像し、その環境そのものはどうなっているのかという新たな興味が湧いてきました。

昨日(9月26日)NHKスペシャル「出生率:女と男 支えあう未来へ」という番組をたまたま見るチャンスがあり、上記の想像がその通りであったことを認識しました。この番組の中では、先進国の出生率が下がり続けている中で、デンマークでは逆に出生率が伸びていること、デンマークは1960年代に、経済成長とともに生じた労働力不足を補うために女性の社会進出に取り組んだこと、女性の多くは納税者となり、高福祉高負担の国作りを支えたことなどが報道されました。また、デンマークは世界で最も「生活の満足度」の高い国であること、短い労働時間、低い教育費、進む男性の育児への参加、つまり、女性の働きやすい社会を作り出した結果出生率が上がったことも報道されました。私がみたコペンハーゲンの風景は上記の報道の結果として現在ある姿そのものだったのです。

初めて訪れたヨーロッパの国がこのような満足度の高い国であったことは大変幸運でした。FIDIC大会ともども印象深い旅でした。関係者には大変お世話になりましたので、この紙面をお借りして御礼申し上げます。

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