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FIDIC NEWS (July 2005)

<和文抄録>

訳責:国際活動委員会 IFI分科会
A.若手専門家のフォーラム(YPF)が刷新される。

北京で開催されるFICIC2005 年次大会では、コンサルティングエンジニアリング業界の将来のリーダーとなる若手専門家達(Young Professionals:YPs)の多くのグループが集まることになっており、それが、今大会の大きな特徴となっている。2005年初頭から研修を続けている23人の若手マネジメント研修生達は、大会直前にそのトレーニングプログラムを修了する。彼らの体験したことの全容は、大会で報告され、大会参加者たちもその体験を共有することになる。若手研修生達は、中国協会の若手専門家達と共にそれぞれのワークショップを支援し、水曜日朝のプレナリーセッションにて報告が行われる。
FIDIC-YPF(Young Professionals Forum)はMA(Member Association)の参加を助け、魅力あるものにする、より継続的なプログラムを作り出すために、すべての若手専門家をオープンのフォーラムに呼び込み、フォーラムの形態や活動方針を見直そうとしている。YPsのために特別に用意された催しはコンファレンスのWebsiteの記事にされている。既に2006年のトレーニングプログラムに申し込むことが可能である。インターネットに基盤をもつコースは2006年1月にスタートし、2006年のFIDIC-EFCA年次大会(9月24日―27日ブタペスト)のプレコンファレンスおよびコンファレンスにて修了する。この研修には定員があり、コンファレンス参加費用を含めた研修費用は2600ユーロである。詳細と参加申し込みはFIDIC.or./ypmtpを参照のこと。

B.イランの能力開発セミナーが業界の進み行く方向を示した。

2005年6月25-26日に、FIDICと会員協会であるIRSCE−Iranによって、FIDIC能力開発セミナーがテヘランで開催され、200人を超えるコンサルティングエンジニアリング会社と政府からの幹部代表者が参加した。イラン協会の代表者とFIDIC 能力開発委員会の委員長であるJohn Ritchie氏により講演がおこなわれた。自由な雰囲気のなかで、突発的に開かれたワークショップでは、セミナー参加者達がIRSCEの能力開発実施計画を作成する場面もあった。セミナーの一部として開催されたセッションは、設計・施工契約(Design-Build)に焦点を絞った契約条件について行われ、上級コンサルタントであるRobert Cochrane氏が、進行役を務めた。これら講師陣は、素晴らしい設備と運営組織と相まって、大変な好評を博した。IRSCEは、今挑戦しようとしている能力開発や調達に関する問題に関して具体的な第1歩を示すことが出来た。
このセミナーは他の国のためのモデルとして企画されており、その成果はFIDIC2005年次大会(北京)の能力開発ワークショップで発表されることになっている。そのようなセミナーを通して、FIDICはFIDICの資源(人的・物的・情報等)を利用して、メンバー協会がそれぞれの能力開発プログラムを開発することに対して支援をすることが出来る。この支援策についてもっと知りたいと考えているMAはJohn Ritchie に連絡されたい。

C.建設契約約款の多国間開発銀行(MDB)共通編が完成した。

FIDICと各多国間開発銀行(Multilateral Development Bank (MDB): 世界銀行グループ(World Bank Group)、アジア開発銀行(Asian Development Bank)、米州開発銀行グループ(InterAmerican Development Bank)、アフリカ開発銀行グループ(African Development Bank)、欧州復興開発銀行(European Bank for Reconstruction and Development)の総称)の建設契約約款のうち一般約款の共通版が各MDBの調達責任者と同意され、許可の下、多国間開発銀行の標準入札書類の中に含まれるようになり、またFIDIC.org..よりダウンロードできるようになった。 この建設契約約款共通編は、MDBにより融資されたプロジェクトにおいて利用するためのものであり、その完成は、調達手順の共通化における重要なステップとして位置づけられる。これまで、MDBがFIDICの契約条件を使用する際には、特別契約約款(Particular Conditions)を組み入れて使用してきた。しかしながらその特別契約約款は、特別とは言うものの、多くのケースで標準的な条文が使われているものであった。さらに、特別契約約款のいくつかの条文は、MDB間で異なっており、このことが非効率的で、不確定的な契約状況を作り出し、争議の種となってきた。標準的な特別契約約款の内容は、共通編においては、一般契約約款に移されている。
FIDICは、近々MDB共通版を製本し、入札書類に取り込みやすい契約パックとして出版する予定である。ガイダンスは“The FIDIC Contracts Guide”への補足に組み入れて近々印刷版、電子版共々出版される予定である。一方、FIDICのトレーニングコースとセミナーでは、1999年第1版とこの共通編との比較を行っている。このMDB共通編で取り上げられなかった査読者のコメントについては、いずれFIDICが建設約款の第2版を出すときに、再度検討が行われる予定である。

D.素晴らしいニュース:支払い遅滞の悪習終焉か

先進国および発展途上経済圏のコンサルタント会社は共に、支払いが非常に遅い、また場合によっては、全く支払いをしないプロジェクト実施機関に長いこと悩まされ続けてきた。FIDICは、多国間開発銀行と協力して、精力的にこの問題を取り上げ、この問題が大手コンサルタント会社に対しても計り知れない負担を強いることになり、中小コンサルタント会社が低開発国の市場に参入できない原因になっていることを指摘してきた。支払い遅滞は、汚職の種を作ることもありうる。
FIDICのメッセージは聞き入れられ、この悩みの種は、少なくとも世界銀行については解消される方向にあるように思われる。世銀は、個々の機関の能力を取り上げ、最終的にコンサルタントの直接支払いが実現できる政策を策定したのである。FIDICは、これに関連する報告書が世銀の理事会に間もなく提出されると連絡を受けている。FIDICは、世界銀行の、この先駆的な動きを賞賛する。

E.BIMILACIでは、民間部門の重要な役割が強調された。

2005年4月にFIDICと主要な国際金融機関(IFI)によって開催された隔年会議(BIMILACI)では、調達方法の問題および新たに合意されたFIDIC建設契約約款の多国間開発銀行(MDB)共通版刊行の問題について、より緊密な連携を図ることにより、FIDICとIFIsの関係を大きく前進させることになった。MDBsは、今後さらにそれぞれの業務方法と政策の改善を定期的に討議する場を設け、そこにFIDICの参加を呼びかけている。
このBIMILACIの会議では、Quality Based Selection(品質重視のコンサルタント選定、特に調達において)、プロジェクト投資の持続性、能力開発、地元コンサルタント産業に対する支援の必要性、及び汚職と戦う手段としての公正管理に関するプレゼンテーションが行われた。インフラ施設の整備に関する関心が高まるにつれ、銀行は民間部門からの支援が増えることを期待している。銀行は、質の良いサプライヤーが参加してくるように手続きを近代化する必要性を認識している。この機会をとらえて、FIDICは、調達についてだけでなく、調達担当者の技術についても質を高める必要性、また民間部門の資源を利用できるようにする必要性を強調した。

F.FIDICは6月のOECD専門家会議で貢献した

FIDICの事務局長Enrico Vinkは、2005年6月に開催されたOECDの公共事業における公正管理専門家会議で産業界を代表する唯一の出席者として講演し、公共事業調達に伴う汚職に対する戦いの中でコンサルティング業界が行っている積極的な貢献策について発表した。 ビジネスの公正管理についての解説がその発表の中核を成したのではあるが、Enricoは例えば、高品質、付加価値、持続的なサービス等、発注者側の要求を具現するための実務的な専門用語についても説明を加えた。Enricoはまた、コンサルティングエンジニアからの専門的アドバイスの価値に対する理解不足が、しばしば価格だけに支配され、汚職の温床になるような誤った調達実務をはびこらせる元凶になっていると指摘した。
同じく6月に、FIDICは、ロンドンで開催された世界経済フォーラムの年次汚職防止連帯会議(PACI, 現在エンジニアリング、エネルギー、装置関係分野から64の主要会社が署名会社として加盟しており、加盟会社の年商は合計5000億ドル。)に唯一のオブザーバーとして出席する機会を得た。PACIは国際商工会議所とTransparency International(NGO)の汚職防止指針を統合しようと計画しており、実施の暁にはFIDICのビジネス公正管理を教材として使用することになっている。

G.モロッコでQuality based Selectionが注目を集めた。

FIDIC財務担当理事Maxime Mazloumは、モロッコを訪問した際、モロッコの政府関係者にQuality Based Selection(技術力重視のコンサルタント選択)の優位性を考慮してくれるように訴えた。彼はFMCI (Federation Marocaine du Conseil et de I’ngenierie, モロッコにおけるFIDICの会員協会)の招きを受けて、FMCIが主催する会員企業、政府関係者、報道機関向けのセミナー出席の為、モロッコを訪れていた。インフラストラクチャーの品質低下に対する懸念が、プロジェクト調達規定の見直しに結びついた。そこでFIDICは、コンサルタント選定、プロジェクトの持続性、ビジネスの公正性確保等の問題に関して一番良い方法を紹介する機会を与えられた。数人の大臣を含む160人ほどの聴衆の関心は高く、その後FIDICは政府関係者により、調達規定改訂の援助をするべく招聘された。

H.各国毎の調達システムの適用拡大についてのコメント

(世銀はプロジェクトの調達に際して、世界統一的な調達システムを各国に押し付けるというよりは、現在各国で使用されている調達システムの適用を認めて行こうという姿勢を示している。)
世銀の目標である、借り手側の調達規定の強化とそれによる能力開発の促進は評価するものの、FIDICは、現在計画されているような、各国毎の調達システム適用拡大の動きには懸念を持っている。各国毎の調達システム適用を拡大する目的は、FIDICの能力開発強化と地元コンサルティング会社活用の拡大という目的に合致しているのではあるが、世銀の提案実施に当たっては、まだ考慮を要する重要な詳細が残っているからである。

 

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