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日時:9月5日 14:00〜16:30
Speakers:Richard Burrett(ABN-AMRO)
John Boyd(Golder Associates)
9月5日午後は、持続性についてファイナンス面とエンジニアリング面に関する2つの講演がありました。
1.持続性とファイナンス(Richard Burrett)
ファイナンスはロンドンのABN AMRO銀行常務理事であるRichard Burrett氏が講演を行いました。この銀行の創立は1824年にさかのぼり、インドネシアをはじめアジア諸国そして中国での長い歴史をもっています。現在は60カ国を超えて3,000以上の支店も持ち、職員98,000人、総資産は8,560億ユーロの規模とのことです。
Burrett氏の講演は最初にAMRO銀行の活動に関する説明があり、次いでプロジェクトのライフサイクルとファイナンスの関係、そして持続的なインフラ開発に関してファンアンスはどうあるべきかを論じました。
キーワードとして「プロジェクトファイナンス」、「新興市場」、「Equator Principle」があげられます。
「Equator Principle」は耳新しい言葉でしたが、融資・投資機関としてプロジェクト(主としてインフラ整備)の環境管理と社会リスクを取り扱う「フレームワーク」のようなものと理解しました。ベースには、世銀やほかの国際金融機関の基準を用いているそうです。
AMRO銀行はこのような「フレームワーク」作りを主導してきました。
その背景には持続的な開発を進めるためには責任ある融資や投資政策を策定する必要があることを強く意識するところにあります。但し、細かい手法は各銀行が独自に構築するそうです。
金融機関がこのような「原則」を採用する動機として、次のような諸点があげられました。
・より統一的なリスク管理によって安全な貸付を行える。
・共通の枠組みや用語を用いることで、透明性が生まれる。
・融投資に係る交渉や協定締結までの時間を短縮して、効率化が生まれる。
・持続的は開発を約束する中核となる。
新興市場におけるプロジェクトファイナンスでは30を超える金融機関がこの「原則」を50百万ドル以上のプロジェクトに適用しており、必須の条件になりつつあるそうです。
「Equator Principle」のお蔭でファイナンスの問題が円滑になったことが認められる一方で、NGOからの反発も出ているとのことです。
プロジェクトのライフサイクルとファイナンスの関係では時間軸に沿ってインプット側とアウトプット側の説明がありました。
時間軸に沿った各段階は次のとおりです。
@土地の配置
A土地の取得
B基本マスタープラン
C計画設計
D入札
E建設
ここで@とAは初期段階でプロジェクトの政策や戦略の基本事項をインプットとし、これに基づきプロジェクトの目的や設計方針、持続性の評価、戦略的な環境評価をアウトプットとします。Bでは資源マネジメントに基づき、概念設計を行い廃棄物やエネルギー消費の評価、EIA/ES/Social Impactなどを行います。Cの段階では計画設計の申請を行い、質問や許可条件への対応、建設中の環境管理計画を行います。DとEでは住民対話や環境モニター、環境報告のほか運転段階に入ったときの環境管理や住民対策を計画します。
これらは主としてエンジニアの仕事ですが、融投資機関の関与についてその問題点を次のように説明しました。
- プロジェクトの立ち上げには、相当な時間を要する。複雑なプロジェクトでは10年もかかることがある。
- プロジェクト成立までの多くの課題、プロジェクトの範囲や設計、利害関係者との折衝などは、資金調達を考えるはるか前に生じ、その解決に長い年月を要する。
- このような期間での融投資機関の関与はファイナンシャルアドバイザーの立場である。
- 早い段階で、よりよいプロジェクト設計を推進することが、後の困難を避ける上で重要である。
- 銀行に資金の要請が行われるまでに、プロジェクトへの相当な投資がすでに行われることがある。
持続的なインフラ開発に関してファンアンスはどうあるべきかに関する論点は次のとおりです。
適切な政府の枠組み
・長期の国家計画に沿ったインフラ投資、投資促進のインセンティブ
・PPPへ参加する公的機関への政府支援、安定した規制
・国内の社会経済開発との整合性
・これらを支持する社会的能力の向上