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2003年 FIDICフランスパリ大会

Workshop-9
Sustainable Development in the Context of Globally Decentralized Market

技術研修委員会副委員長 山下佳彦
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  • 2)地域チームの役割
  • 地域チームは中央マネジメントユニットの方針をベースに、地域の条件を加味した設計を実施し、工程、予算、その他の必要事項などに準拠して、プロジェクトを遂行する。
  • 3)社会的要求事項
  • ・国際的に事業を実施する企業は高いレベルの安全と健康のマネジメントが要求される
  • ・COTEBA社は独自の安全・健康マネジメントシステムを開発し、OHSAS18000の認証・登録に向け準備を進めている
  • ・COTEBA社はこのような健康・安全システムを共通の基準として、ヨーロッパ全域の地域チーム、下請け、資材供給者に遵守させている
  • 4)環境的要求事項
  • ・COTEBA社のクライアントである石油会社は、増大する環境への配慮に対処している(豊富な資金力により、タンク外壁の二重化、リークの防止対策、油廃棄物の回収と分離等)
  • ・リスク評価は設計の最優先事項としている
  • ・リサイクル品の使用促進
  • ・自然エネルギー利用と省エネ対策
  • 5)経済的要求事項
  • ・関連企業に委託することでリスクを抑えて新技術を導入し、併せて長期的に相互が発展できるように配慮する
  • ・委託の評価指標は、健康・安全(40%)、コスト(30%)、稼動効率(15%)、顧客満足(15%)としている。特に安全が最優先事項。
  • 6)総括(結論)
  • 関連企業への委託は、責任意識が高く社会的に前向きな企業にインセンチブを与え、高い基準の導入とパフォーマンスレベルの向上をもたらすことができる。

ケース2:地域での業務環境と投資家への制約(情報ツールによる解決策)

ケース2は、地域に分散した市場では、IT技術を効果的なツールとして活用することで、責任ある投資が可能となることをOTHグループの事例をとおして示している。OTHグループはヨーロッパ全域に事業展開しており、社員650名、年間売上約97億円の中堅CE企業である。CM、設計、維持管理、IT活用技術などが得意分野となっている。

  • 1)フランスに設置したコンピューターセンター
  • 国際的な金融機関が、フランスの地方に事業拠点を設けるため、OTH社に1ヵ月で詳細設計を仕上げるように要請した。当該地域には多くの建築規制が張り付いている。コンピューターセンターを設置することで以下が可能になった:
  • ・投資家、地域の所轄機関による書類受け渡し、許認可の迅速化
  • ・コミュニケーションと情報へのアクセス向上による迅速な方針決定
  • ・情報の再利用
  • ・IT利用により、非常に厳しい条件下であっても事業を効率的に遂行可能
  • 2)ポーランドのショッピングセンター
  • IT技術の活用により、企業が効率よく入札書類の作成に集中できた。発注者も入札書類の再利用が可能となり企業の選定に時間と経費が節減された。以下はIT技術導入の内容と便益:
  • ・入札ルールの明確化
  • ・現地用語の採用
  • ・入札前の技術的な公平性の確保
  • ・ITプラットフォームは、新たな業務形態を可能とした(バーチャルチーム、電子入札等)

ケース3:エンジニアの多様な解決策

  • ・地方分散は新たな競争と、事業機会を創設する
  • ・新たな技術的戦略
  •  −総合エンジニア:貫した技術
  •  −ネットワーク技術:外部技術の導入
  •  −エンジニアに適する:個対個の事業
  • ・共有化された価値の必要性
  •  −持続可能な開発の共通認識(社会、経済、環境)
  •  −CE個人としての達成目標
  • 持続的な建築設計
  •  −冷暖房負荷の削減:自然換気の促進、地域冷暖房、地下水の蓄熱効果など
3.結論

コンサルティングエンジニア企業は、地球規模で分散された市場で社会、経済、環境の課題に如何にして取り組むのか?

ケース1:数カ国で業務を実施する国際的な企業の責任ある行動と責任ある投資

最も厳しい基準に適合させながらも、文化の違いを許容し、併せてだれもが理解できる手順を開発する。

ケース2:地域での業務環境と投資家への制約

IT技術が責任ある投資を可能にする。

ケース3:エンジニアの多様な解決策

分散化されたグローバル市場では、ネットワーク的な技術が「持続可能な開発」の要求事項を理想的に満足させる。

おわりに

今年の年次大会はフランスで開催されたこともあり、発表の大半はフランス語で行なわれた。通訳が英語に翻訳したものの、大変分かりづらく苦労した。今後の教訓としてFIDIC大会の言語は英語に統一すべきであると感した。

資料の配布がなく分かりづらい英語をとおして四苦八苦し、質疑応答の時間も通訳の関係からほとんどなかったことも残念であった。

大会全体をとおして、大臣が2名参加されたこと、フランスから若手エンジニアが多く参加したこと、これがYPFに良い刺激になったこと、カフェスタイルのパネルディスカッションでくつろいだ雰囲気を醸成し、眠気を吹き飛ばしてくれたこと、学生が企画・作製した環境アニメコンテストで会場を盛り上げたこと等は、さすがにフランスならではのプログラムであり、評価すべきであろう。

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